請求書のチェック、記帳、振込、月次の締め——毎月、経理の作業にどれだけの時間が溶けているでしょうか。インボイス制度と電子帳簿保存法への対応で、中小企業の経理負担はこの数年で確実に重くなりました。しかも多くの会社では、その業務をたった1人が背負っています。

本記事は、増え続ける経理・バックオフィス業務を「効率化」しながら、同時に「コスト」も下げるための考え方と具体的な手順を、最新の調査データとともに整理します。高価なシステム投資の前にできることから、無理なく始められる順番で解説します。

この記事でわかること

  • インボイス制度・電子帳簿保存法で、中小企業の経理負担が実際どれだけ増えたのか(最新データ)
  • 「1人経理」に潜む、見えないコストとリスクの正体
  • 経理・バックオフィスを効率化する具体的な5ステップ
  • ツール選び・コスト見直しで失敗しないための判断基準

なぜいま「経理の業務効率化」が急務なのか

結論から言えば、制度対応で事務作業が増えた一方、人手は増えていないからです。経理の現場は「やることが増えたのに、人が足りない」という板挟みに陥っています。

日本商工会議所・東京商工会議所が2024年に実施した実態調査によると、インボイス制度の導入で約8割(82.2%)の事業者が「事務負担が増えた」と回答し、約5割(48.8%)が「コストが増えた」と感じています。さらに、受け取ったインボイスの登録番号をシステムで自動読み取りしているのはわずか11.3%にとどまり、75.0%は今も目視で確認しているのが実態です。

2024年1月に電子取引データの電子保存が義務化された電子帳簿保存法についても、同調査では7割近くが「業務負担が増えた」と回答しています。日本経済新聞も「インボイス1年、中小8割が事務負担」と報じ、経理のデジタル化が急務だと指摘しています。

こうした空気は検索データにも表れています。Googleトレンド(日本・直近7日間)で「業務効率化」の急上昇関連キーワードを見ると、「経理 業務効率化」が大きく伸びており、現場の関心が高まっていることがうかがえます。

「1人経理」という見えないリスク

負担増の影響をもっとも強く受けているのが、担当者が1人しかいない「1人経理」の体制です。前出の調査では、売上高1,000万円以下の事業者の約9割(92.0%)が1人で経理事務を行い、約8割(78.1%)は代表者や営業担当者などが本業と兼務していました。

1人経理は身軽な反面、業務がブラックボックス化(属人化)しやすいのが弱点です。担当者が体調を崩したり退職したりすると、給与計算や支払いが止まりかねません。チェックする人がいないためミスや不正にも気づきにくく、会社の規模が大きくなるほどリスクが膨らみます。

経理にかかる「見えないコスト」を可視化する

経理のコストは、会計ソフトの月額料金だけではありません。本当に効いているのは、目に見えにくいコストです。まずは下の4種類に分けて、自社のコストを棚卸ししてみましょう。

コストの種類

具体例

直接コスト

会計ソフト・各種SaaSの利用料、外注費、用紙・印刷代

間接コスト(工数)

手入力・転記・確認にかかる人件費、残業代

機会コスト

数字の集計が遅く、経営判断が後手に回ることによる損失

リスクコスト

入力ミス・転記漏れ・申告ミスによる手戻りやペナルティ

たとえば、紙の請求書を1枚ずつ目視で確認し、会計ソフトに手入力する作業は、それ自体が人件費という「間接コスト」です。紙の保管に使うキャビネットやスペースの賃料も、積み重なれば無視できません。「無料でやっているつもりの作業」が、実は最も高いことは珍しくないのです。

経理・バックオフィスを効率化する5つのステップ

効率化は、いきなり高価なシステムを入れることではありません。「現状を知る → なくす → つなぐ → そろえる → 任せる」の順で進めると、無理なく成果が出ます。

ステップ1 現状を棚卸しする

まず、経理・総務で行っている業務をすべて書き出し、それぞれに「月何時間かかっているか」を概算で付けます。一番時間を食っている作業こそ、最初に手を打つべきポイントです。感覚ではなく、数字で現状を見える化することが第一歩になります。

ステップ2 紙と手入力をなくす

もっとも効果が大きいのが、紙と手入力の削減です。クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードとデータ連携し、取引明細の取得から仕訳、集計までを自動化できます。手入力が減れば、転記漏れや入力ミスといったヒューマンエラーも防げます。会計ソフト利用者のクラウド利用率は2025年3月末で38.3%(前年比+4.6ポイント)と伸びていますが、裏を返せば過半数はまだ紙やインストール型であり、改善の余地が大きい領域です。

ステップ3 ツールを「つなぐ・減らす」

会計、請求、勤怠、経費精算がバラバラのツールに分かれていると、同じ数字を何度も入力する二度手間が発生します。連携できるツールでそろえ、重複した機能のサブスクは解約する——これだけで工数も料金も下がります。「気づけば似たようなツールを複数契約していた」というケースは、中小企業でも珍しくありません。

ステップ4 業務を標準化する

手順書(マニュアル)を整え、「その人にしかできない」状態を解消します。承認フローを分け、誰がいつ何をしたかログが残る仕組みにすれば、属人化と不正リスクの両方に効きます。標準化は、将来の引き継ぎや増員のときにも大きな差を生みます。

ステップ5 外部の力を使う

すべてを社内で抱える必要はありません。定型業務はアウトソース、ツール選定や乗り換えは専門家に相談するのも有効な選択肢です。限られた人員を、付加価値の高いコア業務に集中させましょう。

具体例:紙の請求書処理を見直すと何が変わるか

イメージしやすいよう、典型的な流れで考えてみましょう。これまで紙で届く請求書を担当者が1枚ずつ開封・仕分けし、内容を目視で確認してから会計ソフトに手入力していたとします。月末はこの作業に追われて残業が常態化——多くの中小企業で見られる光景です。

ここで請求書の受領を電子化し、会計ソフトとデータ連携させると、入力作業の多くが自動化され、確認と承認だけが人の仕事として残ります。空いた時間を資金繰りの分析や経営への報告に回せれば、経理は「記録するだけの部署」から「経営を支える部署」へと役割が変わります。これこそが、効率化の本当の狙いです。

効率化でつまずきやすい3つの落とし穴

一方で、進め方を誤ると効果が出ません。次の3点は特に注意したいポイントです。

  • ツールを入れただけで満足する:運用ルールを決めないと、結局は手作業に逆戻りしてしまいます。
  • 一度にすべてを変えようとする:現場が混乱します。影響の大きい1業務から、段階的に進めましょう。
  • 現場の声を聞かない:実際に使う担当者を巻き込まなければ、新しいやり方は定着しません。

ツール選び・コスト見直しで失敗しないコツ

ツールは「多機能かどうか」より、「自社の業務に合うか」「今あるツールと連携できるか」で選びます。中小企業のIT投資の目安は売上高の1〜3%とされますが、その予算の多くは既存システムの維持・運用に偏りがちです。守りの支出を見直し、効率化という“攻め”に振り分ける視点を持つことで、同じ予算でも成果は大きく変わります。

まとめ

経理・バックオフィスの効率化は、単なる時短ではありません。人件費・ミス・遅い意思決定という「見えないコスト」を同時に減らし、経営の数字を見えるようにする取り組みです。まずは業務の棚卸しと、紙・手入力の削減から。小さく始めて標準化していけば、1人経理の限界も着実に超えていけます。

よくある質問(FAQ)

Q. 何から手をつければよいですか?
A. まずは業務の棚卸しと工数の見える化です。もっとも時間がかかっている作業から電子化・自動化すると、効果を実感しやすくなります。

Q. クラウド会計に変えると、かえってコストが上がりませんか?
A. 月額料金は増える場合もありますが、工数・残業・ミスの削減を含めた「総コスト」では下がるケースが多くあります。小規模なプランから試すのがおすすめです。

Q. 1人経理で、不正やミスが心配です。
A. 承認者と作成者を分ける、操作ログが残るクラウドを使う、定期的に第三者がチェックする、の3点が有効です。

Q. インボイス・電子帳簿保存法への対応は、もう必須ですか?
A. インボイス制度は2023年10月開始、電子帳簿保存法の電子取引データ保存は2024年1月に義務化されています。未対応の場合は、早急な対応をおすすめします。

業務システム・SaaSのコスト見直しは「ヤスク」へ

経理の効率化を進めると、次に気になるのが「いま使っているツールやシステムは、本当に最適なのか」という点です。有限会社リールゲイトの「ヤスク」は、業務システムやSaaSのコスト削減・サブスク見直しをお手伝いするサービスです。

  • 使っていない・重複しているSaaSやサブスクの洗い出し
  • 割高になっている業務システムの代替ツールのご提案
  • 乗り換え時の比較・選定のサポート

「まず何が無駄かを洗い出すところから始めたい」という段階でも構いません。現状のツール棚卸しのご相談だけでも、お気軽にどうぞ。

参考文献・出典

  • 日本商工会議所「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」結果について/https://www.jcci.or.jp/news/news/2024/0909113000.html (参照:2026年6月24日)
  • 東京商工会議所「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」/https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1204038 (参照:2026年6月24日)
  • 日本経済新聞「インボイス1年、中小8割が事務負担 経理デジタル化急務」/https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA302K50Q4A930C2000000/ (参照:2026年6月24日)
  • 弥生株式会社 プレスリリース(クラウド会計ソフト利用率・シェア/2025年5月13日)/https://www.yayoi-kk.co.jp/company/pressrelease/detail.20250513/ (参照:2026年6月24日)
  • マネーフォワード クラウド「バックオフィス自動化はどこまで可能?」/https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/84217/ (参照:2026年6月24日)
  • Googleトレンド(日本・過去7日間/キーワード「業務効率化」「コスト削減」関連クエリ)/https://trends.google.co.jp/ (参照:2026年6月24日)