「うちは紹介と既存の取引でまわっているから、ホームページは会社案内があれば十分」。東大阪や大阪市内の町工場を訪ねると、いまでもよく聞く言葉です。

ところが発注側の動きは、ここ数年で確実に変わりました。取引先の担当者が代わった、既存の得意先が減った、新しい加工先を急いで探している——そのとき彼らが最初に開くのは、電話帳でも名刺入れでもなく検索窓です。

この記事では、東大阪の製造業という具体的な現場を題材に、「会社案内で終わっているHP」を「発注者に見つかるHP」へ作り替えるための考え方と手順を、公的な一次情報とGoogle公式ガイドをもとに整理します。

この記事でわかること

  • 東大阪の町工場が置かれている「探される側」の現状(公的データで確認)
  • 発注者が加工先を探すときに実際にたどる3つの入口
  • 会社案内サイトが受注につながらない構造的な理由(Google公式の「コモディティ情報」という考え方)
  • 1加工=1ページなど、明日から手を動かせる作り替えの実務
  • 更新が止まる会社と止まらない会社の分かれ目

東大阪の町工場は、そもそも「探される側」に回れているか

まず前提を数字で押さえます。東大阪市技術交流プラザ(東大阪市モノづくり支援室)によれば、東大阪市の工場は事業所数で約5,500。可住地面積1km²あたりの事業所数は全国の主要都市で最も高く、基盤技術が高密度に集積しています。

さらに東大阪の特徴として同サイトが挙げているのが、親会社との系列を持たない独立系の企業が多いという点です。企業城下町型のピラミッド構造ではなく、近隣の協力工場と横につながる分業ネットワークで成り立っている。だからこそ「何でもつくれる東大阪」と言われるわけですが、裏を返せば系列が仕事を運んできてくれる構造ではないということでもあります。

仕事が自動的に降りてこない以上、外から見つけてもらう入口を自分で用意するしかありません。ところが、その入口であるはずのホームページは、多くの会社で「会社概要・沿革・設備一覧・地図」で止まっています。

総務省の令和6年通信利用動向調査では、自社のホームページを開設している企業の割合は93.2%。持っているかどうかで差がつく時代はとっくに終わっていて、差がつくのは中身だけです。

発注者はいま、どうやって加工先を探しているのか

「見つかるHP」を考える前に、探す側の動線を押さえます。大阪の製造業の場合、入口はおおむね次の3つです。

1. 公的なマッチングデータベース

東大阪市技術交流プラザには1,200社以上が登録されており、発注者は「加工種別から探す」「業種から探す」「こだわり条件で探す」という形で候補を絞り込みます。大阪府と公益財団法人大阪産業局が運営するMOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)も、クリエイション・コア東大阪を拠点にビジネスマッチングや販路開拓支援を行っています。

ここで重要なのは、これらのデータベースはあくまで「候補リスト」だという点です。発注者は候補を見つけたあと、ほぼ必ず社名で検索し、自社サイトを見に来ます。つまり登録先とホームページはセットで機能します。

2. 検索エンジン(キーワードは「加工+条件」)

発注者が打ち込むのは「東大阪 町工場」ではありません。「ステンレス 溶接 小ロット 大阪」「アルミ 切削 試作 短納期」のように、加工内容+材質+ロット・納期の条件で検索します。技術交流プラザの検索軸が「加工種別」「こだわり条件」になっているのは、発注者の頭の中がそうなっているからです。

3. 生成AIによる検索(AI Overviews/AIモード)

ここ1年で急速に増えたのが3つ目です。Googleトレンドで「AI検索」の推移を見ると、2026年7月下旬から8月下旬にかけて日本国内で継続的に高い関心が維持されており(過去7日間の比較でも「MEO」「オウンドメディア」を上回る水準)、過去1か月の関連トピックには「Google Search Console」が急上昇として並んでいます。作り手側の関心も、探す側の行動も、同時に動いているということです。

会社案内サイトが受注につながらない、構造的な理由

ではAI検索に対して特別な小細工が要るのか——というと、Googleの答えは明確に「ノー」です。

Googleは公式ドキュメント「Optimizing your website for generative AI features on Google Search」で、生成AI機能は従来の検索ランキング・品質システムを土台にしていると説明しています。仕組みとしては、検索インデックスから関連ページを取得して回答を組み立てる「RAG(グラウンディング)」と、ひとつの質問から複数の関連クエリを同時に投げる「query fan-out(クエリのファンアウト)」が使われます。

つまり「アルミ 切削 試作」と聞かれたAIは、裏側で「アルミ 切削 小ロット 対応」「試作 短納期 加工 大阪」といった派生クエリも同時に走らせ、そこで拾えたページを根拠にして答えを作ります。拾われるためには、その条件が書かれたページが存在していなければならない。会社案内しかないサイトは、この段階で候補にすら入りません。

Googleが言う「コモディティ情報」と「非コモディティ情報」

同じガイドで、Googleはコンテンツを2つに分けています。

コモディティ情報=誰が書いても同じになる一般論。誰でも知っている common knowledge に基づき、読者に固有の洞察をほとんど加えない内容。
非コモディティ情報=一次的な経験や専門性に裏打ちされた、一般論を超える内容。

Googleは「一次的なレビューは個人の経験に基づく独自の視点を提供するが、既存コンテンツの要約は他所にある情報を言い直しているだけだ」とも書いています。生成AIモデルが簡単に作れてしまう内容ではなく、自分が知っていることをもとに、自分で書けという趣旨です。

この物差しを町工場のHPに当てはめると、答えははっきりします。

  • コモディティ:「高い技術力でお客様のご要望にお応えします」「創業以来、品質にこだわってきました」「NC旋盤 3台」
  • 非コモディティ:「肉厚0.5mmのステンレスパイプを歪ませずに溶接するために、治具をこう変えた」「図面なしの現物合わせから起こした試作で、初回納品までに何日かかったか」

後者は、その工場でしか書けません。競合がコピーできず、AIが勝手に生成することもできない。これが東大阪の町工場が本来持っている、最も強いWeb資産です。

なお同ガイドは、巷でよく言われる施策の多くを明確に否定しています。llms.txtなどの特殊ファイルはGoogle検索では使われない、コンテンツを細切れに「チャンク化」する必要はない、構造化データは生成AI検索の必須要件ではない、不自然な「言及」集めは有効ではない——。「AEO」「GEO」という呼び方についても、Googleの立場では結局それはSEOだと整理されています。小手先の対策に予算を割く前に、書くべきことを書く。順番はそれだけです。

キーワードの決め方そのものに迷いがある場合は、キーワード選定のやり方5ステップ|中小企業がAI検索にも選ばれる方法【2026年最新】も合わせて読んでみてください。

会社案内サイトの作り替え方——4つの実務

1. 「1加工=1ページ」に分ける

もっとも効くのに、もっともやられていないのがこれです。多くの町工場のサイトは「事業内容」という1ページに、切削も溶接も板金も表面処理も全部詰め込んでいます。これでは「アルミ 切削 試作 大阪」で検索した人に対して、そのページが何の専門ページなのかを検索エンジンにもAIにも伝えられません。

加工種別ごとにページを分け、それぞれのページで「何を」「どの材質で」「どこまでの精度・サイズで」「どのロットから」受けられるかを書き切る。技術交流プラザの「加工種別から探す」と同じ粒度に、自社サイトを合わせるイメージです。

2. 「対応できる条件」を数字で書く

発注者が知りたいのは技術力の高さではなく、自分の案件を受けてもらえるかどうかです。最低ロット、最大加工寸法、対応可能な材質、公差、標準納期、図面がない場合の対応可否。この6項目を書くだけで、問い合わせの質は変わります。

逆に、書かないことのコストは大きい。「1個から対応可」と書いていない工場は、1個から探している発注者の検索結果に出てきません。

3. 事例は「困りごと→打ち手→結果」で書く

製品写真を並べた「加工事例」ギャラリーは、残念ながらコモディティ側です。テキストがないため検索にもAIにも中身が伝わりません。

書き方を変えます。どんな困りごとで相談が来たか/なぜ他社で難しかったか/自社はどう対応したか/結果どうなったか。守秘義務があるなら、業界名と部品の一般名だけにして数値をぼかせば書けます。これがGoogleの言う「一次的な経験に基づく独自の視点」そのものです。

4. 更新が止まらない仕組みを、書き始める前に決める

ここが一番の分かれ目です。多くの会社が1〜2か月は頑張り、繁忙期に入って止まります。止まったサイトは、そのまま何年も更新日が古いまま放置されます。

現場が忙しい町工場で「社長がブログを書く」運用は、ほぼ続きません。誰が・いつ・何をテーマに書くのかを先に決め、書けない前提で外部の手を入れる。この設計を最初にやるかどうかで、1年後の結果が変わります。E-E-A-Tの担保の仕方についてはE-E-A-T対策2026|専門家がいない中小企業HPが信頼される7ステップで詳しく整理しています。

今週から手を動かす順番

  1. 自社を「加工+条件」で検索してみる。「(自社の主力加工) (材質) 小ロット 大阪」で検索し、自社が出てくるか、AIによる概要に何と書かれているかを確認する。ここが出発点です。
  2. 直近1年の見積・受注を10件、紙に書き出す。どんな加工で、何がネックで、どう解決したか。これが記事のネタ帳になります。
  3. 主力加工を3つ選び、それぞれ1ページ作る。最低ロット・最大寸法・材質・公差・納期・図面なし対応の6項目を必ず入れる。
  4. 事例を3本、テキストで書く。写真の下に150字でもいいので「困りごと→打ち手→結果」を添える。
  5. Search Consoleに登録し、生成AIパフォーマンスレポートを見る。Googleは公式ガイドの中で、生成AI機能での見え方はSearch Consoleのレポートで確認するよう案内しています。「内部指標を使える」とうたう外部ツールには注意、とも明記されています。
  6. 公的データベースへの登録状況を確認する。東大阪市内なら技術交流プラザ、大阪府内ならMOBIO。無料で使える入口を空けたままにしない。

同じ「地域×業種」の視点で建設・住宅系を扱った記事として、なぜ大阪の工務店HPに問い合わせが来ないのか|耐震補助金の検索需要と締切もあります。業種は違っても、詰まっている場所はよく似ています。

まとめ

  • 東大阪の製造業は約5,500事業所・全国屈指の密度。系列に頼らない独立系が多く、自ら見つけてもらう入口が要る
  • 企業のHP開設率は93.2%。持っているかではなく、中身で差がつく段階に入っている。
  • 生成AI検索は従来の検索ランキングの上に乗っている。特別な小細工(llms.txt、チャンク化など)はGoogle検索では不要。
  • 効くのは非コモディティ情報——その工場でしか書けない加工条件と、実際の困りごとの解決記録。
  • 実務は「1加工=1ページ」「条件を数字で」「事例をテキストで」「更新の仕組みを先に決める」の4つ。

よくある質問

Q. 取引先は紹介がほとんどです。それでもHPを作り替える意味はありますか。

A. あります。紹介であっても、相手はほぼ必ず社名で検索して自社サイトを確認します。そのとき更新が3年前で止まっていたり、対応範囲が読み取れなかったりすると、紹介の熱量はそこで下がります。HPは新規集客の道具であると同時に、紹介案件を取りこぼさないための保険でもあります。

Q. AI検索対策として、llms.txtや構造化データを入れるべきですか。

A. Google検索については、公式ガイドがllms.txtは使っていないと明言しています。構造化データも生成AI検索の必須要件ではありません。ただし構造化データはリッチリザルトの対象になり得るため、SEO施策の一環として続ける価値はある、というのがGoogleの整理です。優先度は、まずコンテンツです。

Q. 守秘義務があって、加工事例を公開できません。

A. 発注元の社名や図面を出す必要はありません。「食品機械メーカー様からのご相談で、ステンレスの薄板部品を…」のように業界と部品の一般名にとどめ、寸法や数量は「約」でぼかせば書けます。書けるのは技術の話であって、取引先の話ではありません。

Q. 記事を書く人員がいません。

A. これが最も多い相談です。現場が動いている会社ほど書く時間はありません。この場合、社内で書く前提を捨てて、ヒアリングをもとに外部が書き、社長が事実確認だけする体制にしたほうが続きます。書けない前提で設計するのが現実解です。

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参考文献・出典