「気づけば毎月のSaaS(クラウドサービス)の請求が、じわじわ増えている」——そんな中小企業が増えています。

2026年はMicrosoft 365やSalesforceの値上げが相次ぎ、円安も重なって、同じツールを使い続けるだけでコスト負担が膨らむ局面に入りました。

本記事では、契約したまま“眠っているサブスク”を見つけ出してムダを止める「SaaS棚卸し」の5ステップを、最新データとあわせて解説します。専門ツールがなくても、Excelと請求明細から今日始められます。

この記事でわかること

  • 2026年にSaaS費用が「放っておくと増える」3つの理由
  • 契約済みライセンスの約半分が“未使用”という実態(最新調査データ)
  • 今日から始められるSaaSコスト削減5ステップ
  • 解約・ダウングレード・年払い切替でムダを止める具体策
  • 一度削って終わりにしない「増えない仕組み」の作り方

なぜ2026年、SaaS費用は放っておくと増えるのか

結論から言うと、2026年は「何もしなければコストが上がる」年です。理由は大きく3つあります。値上げ・円安・SaaSの増殖です。順に見ていきます。

理由1:主要SaaSの値上げが続いている

業務で使う定番ツールの値上げが相次いでいます。代表的な事例を整理します。

サービス

値上げの動き

Microsoft 365(法人)

2025年4月に法人向けプランが約5%改定。以降も「Teams分離プラン」などプラン体系の見直しが続いている。

Salesforce

2025年8月1日より主要クラウド製品の標準価格を平均6%引き上げ。プランによっては大幅な改定となり中小企業への影響が指摘されている。

1つひとつは数%でも、複数のSaaSを合算すると年間では無視できない負担増になります。契約を「自動更新のまま」放置していると、値上げ分をそのまま払い続けることになります。

理由2:円安でドル建てコストが膨らむ

海外製SaaSの多くはドル建てで価格設定されています。為替が円安に振れると、ドル建て価格が同じでも日本円での支払額は増えます。一般に、1ドル110円から150円へ動けば、ドル建て価格が不変でも支払コストは約36%増える計算になります。値上げと円安が重なると、体感以上にコストが上振れします。

理由3:SaaSが“増殖”し、誰も把握していない

部署ごと・個人ごとにSaaSを契約できる時代になり、会社全体で何を契約しているか誰も把握できていない状態が起きています。IT部門の承認を得ずに導入される「シャドーIT」は珍しくありません。ある調査では、従業員の80%以上が承認なしに業務でSaaSを使った経験があると回答し、自社が利用するクラウドサービスの全容をIT部門が把握できている企業は2割程度にとどまるという指摘もあります。把握できていないものは、当然ながら削減もできません。

データで見る「SaaSのムダ」の正体

「うちは無駄遣いしていないはず」と感じても、データはそうではないと示しています。SaaS管理プラットフォームZyloの「2025 SaaS Management Index」では、次のような実態が報告されています。

  • 契約済みライセンスの約53%が、直近30日間で使われていない(未使用・低活用)
  • 組織あたり年間で平均約2,100万ドル分の支出がムダになっており、前年比で約14%増加
  • 従業員1人あたりのSaaS支出は年約4,830ドルで、前年比約22%増
  • ITリーダーの約66.5%が、従量課金やAI課金による「想定外の請求」を経験

ポイントは「使っていないのに払い続けている」ライセンスが、平均で半分近くも眠っているということです。ここが削減の最大の狙い目になります。

これは大企業だけの話ではありません。むしろ管理担当が兼任になりがちな中小企業ほど、休眠ライセンスや重複契約が見過ごされやすい傾向があります。まずは「見える化」から始めることが、そのままコスト削減につながります。

【保存版】SaaSコスト削減5ステップ

ここからは、専用ツールがなくても実践できる棚卸しの手順を5ステップで紹介します。まずは1周回してみることが大切です。

ステップ1:全SaaSを棚卸しして「見える化」する

最初にやるのは、契約しているSaaSの全数把握です。次の情報源を突き合わせると、抜け漏れを減らせます。

  • クレジットカード・口座の明細(毎月/毎年の定期課金を抽出)
  • 経費精算データ(個人立替で契約されたツールの発見)
  • 各サービスからの請求メール(「invoice」「receipt」「ご請求」で検索)

Excelやスプレッドシートに「サービス名/用途/契約者・部署/人数(ライセンス数)/月額・年額/支払方法/更新日」を一覧化します。この一覧が、以降すべての判断の土台になります。

ステップ2:利用状況を確認し「休眠・重複」を特定する

次に、一覧化したSaaSが本当に使われているかを確認します。多くのSaaSは管理画面で「最終ログイン日」や「アクティブユーザー数」を確認できます。次の3つに印を付けていきます。

  • 休眠:直近30〜90日ログインがない、または割り当てたのに使われていないライセンス
  • 重複:同じ用途のツールが複数ある(例:チャット、オンラインストレージ、Web会議が二重三重)
  • 過剰:上位プランなのに下位プランの機能しか使っていない

ステップ3:解約・ダウングレード・統合で減らす

印を付けたものから手を打ちます。判断はシンプルです。

  1. 解約:休眠ライセンス・使っていないツールは思い切って止める
  2. ダウングレード:使っていない機能分のプランを下げる
  3. 統合:重複ツールは1つに寄せる。オールインワン型に集約すると、契約数そのものを減らせる

いきなり全社解約が不安な場合は、まず1ライセンスを停止して1カ月様子を見る「お試し停止」から始めると、業務影響を抑えながら進められます。

ステップ4:支払い条件・プランを最適化する

使い続けると決めたツールも、支払い方法で費用は変わります。一般に、月払いから年払いへ切り替えると割引が適用されるケースが多く、利用が安定しているツールは年払いが有利になりやすいです(ただし途中解約のしにくさとの兼ね合いは要確認)。あわせて、ユーザー数の増減に合わせてライセンス数を毎回見直すこと、為替や値上げの影響が大きい海外SaaSは国産の代替ツールと比較検討することも有効です。

ステップ5:「増えない仕組み」を作って定例化する

棚卸しは一度きりでは元に戻ります。ムダが再発しないよう、次のような仕組みを決めておきます。

  • 申請ルール:新しいSaaS契約は申請・承認を通す(誰が・いくらで・何のために)
  • 棚卸しの定例化:四半期に一度、または更新月の前月に一覧を見直す
  • 退職・異動時の棚卸し:使わなくなったアカウントを必ず停止する

この「入口(申請)」と「定期点検(棚卸し)」の2つを回すだけで、SaaS費用は驚くほど膨らみにくくなります。

やりがちな失敗と注意点

削減を急ぐあまり、次の点は見落としがちです。解約前には、データのエクスポートや他ツールへの移行が必要ないかを確認しましょう。また、セキュリティやログ保全のために契約しているツールを「使っていないから」と安易に切ると、リスクが増えることもあります。コストと業務・セキュリティのバランスを見て判断することが大切です。

まとめ

2026年は、値上げ・円安・SaaSの増殖により「何もしなければコストが上がる」年です。一方で、契約済みライセンスの約半分は使われていないというデータもあり、削減の余地は大きく残っています。まずは全SaaSの見える化から始め、休眠・重複・過剰を特定して減らし、支払い条件を最適化し、最後に増えない仕組みを作る——この5ステップを一度回すだけで、多くの企業がムダを見つけられます。値上げの通知が届く前に、今月の請求明細を1枚開くところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. SaaS管理の専用ツールは必要ですか?

A. まずは不要です。請求明細とExcelでの一覧化から十分始められます。契約数が数十を超え、手作業での把握が難しくなってきた段階で、SaaS管理ツールの導入を検討すると費用対効果が出やすくなります。

Q2. どのくらいのペースで見直せばよいですか?

A. 目安は四半期ごと、または各ツールの「更新月の前月」です。更新(自動継続)の直前に見直すと、不要な1年分の契約を止めやすくなります。

Q3. 解約すると業務が止まらないか不安です。

A. いきなり全社で止めず、1ライセンスだけ停止して1カ月様子を見る「お試し停止」から始めると安全です。問題がなければ範囲を広げていきます。

Q4. 値上げの連絡が来ました。すぐ乗り換えるべき?

A. 慌てて乗り換える必要はありません。まず自社の利用状況(人数・機能)を棚卸しし、プランのダウングレードや年払い、代替ツールとの比較で総額を試算してから判断すると、失敗が減ります。

業務システム・サブスクのコスト削減は「ヤスク」にご相談ください

「棚卸しはやってみたいが、時間も専門知識も足りない」——そんな中小企業のために、有限会社リールゲイトはコスト削減サービス「ヤスク」を提供しています。業務システムやSaaS・サブスクの利用状況を見える化し、ムダの発見から見直しまでをお手伝いします。

  • 契約中のSaaS・サブスクの棚卸しと重複・休眠の洗い出し
  • プランの最適化や代替ツールのご提案によるコスト削減
  • 増やさない・戻さないための運用ルールづくりのサポート

「まず何から手をつければいいか」を整理するだけでも効果があります。まずはご相談だけでもお気軽にどうぞ。

参考文献・出典

  • Zylo「2025 SaaS Management Index Reveals First Increase in Average SaaS Spend in Three Years」 https://zylo.com/news/2025-saas-management-index (参照日:2026年7月17日)
  • Zylo「2025 SaaS Management Index」 https://zylo.com/reports/2025-saas-management-index/ (参照日:2026年7月17日)
  • TechTargetジャパン「クラウドの『値上げ』が止まらない:SaaSの大幅な値上げが続く理由」 https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2402/22/news13.html (参照日:2026年7月17日)
  • プライシー「【2026年最新】Salesforce値上げ|改定額と対応策まとめ」 https://www.pricey.jp/web/articles/4922 (参照日:2026年7月17日)
  • WatchGuard「シャドーITを持つ企業の65%がデータ損失に悩む」 https://www.watchguard.co.jp/security-news/65-of-companies-with-shadow-it-suffer-data-loss.html (参照日:2026年7月17日)
  • データのじかん(ウイングアーク1st)「ソフトウェアコスト急増の理由と8割の企業が抱える不満への対策」 https://data.wingarc.com/sw_op_cost-76219 (参照日:2026年7月17日)

※トレンド把握にあたりGoogleトレンド(日本/過去7日間・過去1ヶ月)での確認を試みましたが、本記事作成時点では描画データを取得できなかったため、上記のWeb検索による一次・二次情報で「サブスク見直し」「SaaS値上げ」「シャドーIT」「SaaS棚卸し」等の関心の高まりを確認しています。