「人手が足りないのに、正社員として採用する余裕はない」——そんなジレンマを抱える中小企業ほど、見逃してはいけない制度があります。
それが、返済不要の雇用助成金「キャリアアップ助成金・正社員化コース」です。有期契約やパートの従業員を正社員に転換するだけで、中小企業なら1人あたり最大80万円が受け取れます(2026年度/令和8年度)。
最低賃金の大幅な引き上げや「年収の壁」への対応が待ったなしのいま、上昇する人件費を"国の支援"で相殺できるこの制度は、活用しない手はありません。本記事では、支給額・要件・申請の流れを、中小企業の視点でわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- キャリアアップ助成金「正社員化コース」で中小企業がもらえる金額(2026年度版)
- 支給額が2倍になる「重点支援対象者」と、2026年度に新設された「情報公表加算」
- 正社員化と併せて狙える「人材育成」「賃金・処遇改善」の助成金
- 申請でつまずかないための5ステップと、よくある失敗の防ぎ方
キャリアアップ助成金とは?2026年度も続く「正社員化」への国の支援
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者・パート・派遣といった非正規雇用の従業員の処遇改善に取り組む事業主を支援する、厚生労働省の雇用関係助成金です。融資ではなく返済不要で、要件を満たせば原則として支給されます。2026年6月時点で終了期日は定められておらず、令和8年度(2026年度)も継続して実施されています。
複数のコースがありますが、中小企業がまず押さえたいのが、非正規から正社員への転換を支援する「正社員化コース」です。
なぜ「いま」注目なのか
背景にあるのは、賃金と社会保険をめぐる大きな環境変化です。2026年度は最低賃金が過去最大規模で引き上げられる見込みで、全国加重平均で1,200円前後への到達が予想されています(具体的な目安は2026年夏に審議・決定される見込み)。加えて「年収の壁」対応として、短時間労働者の社会保険加入も段階的に進みます。人件費は構造的に上がり続ける局面に入っているのです。
実際、Googleトレンド(日本・過去30日)で「キャリアアップ助成金」の関連ワードを見ると、「最低賃金」「社会保険適用時(処遇改善)」「両立支援助成金」「人材確保等支援助成金」「働き方改革推進支援助成金」などが急上昇しています。人件費の上昇局面だからこそ、正社員化・賃金改善を"助成金で後押しする"という発想が広がっているといえます。
【本題】正社員化コースの支給額|有期→正規で最大80万円
正社員化コースは、「どのパターンで転換するか」と「対象者が誰か」で支給額が変わります。2026年度の中小企業向けの支給額は、次のとおりです(1人あたり・転換後6か月ずつの2期に分けて支給)。
転換パターン | 通常 | 重点支援対象者 |
|---|---|---|
有期契約 → 正社員 | 40万円 | 80万円 |
無期契約 → 正社員 | 20万円 | 40万円 |
※上記は中小企業・1人あたりの額です。大企業は原則としてこの4分の3の額になります。
支給額が2倍になる「重点支援対象者」とは
「重点支援対象者」に該当すると、支給額が上表のように大きくなります。主に、次のような方が対象です。
- 同一の事業主に3年以上、有期雇用で継続して雇用されている方
- 雇入れから3年未満で、過去5年以内に正社員として雇用された経験がない方 など
- 派遣労働者、母子家庭の母・父子家庭の父などの特定の対象者
自社のパート・契約社員がどの区分に当たるかで金額が変わるため、転換する前の確認が重要です。
2026年度の新設「情報公表加算」で1事業所+20万円
2026年度は、正社員転換などの取組内容を自社ウェブサイトや厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で公表すると、1事業所あたり20万円(大企業は15万円)が加算される「情報公表加算」が新設されました。要件を満たせば、正社員化の支給額に上乗せして受け取れます。
正社員化と併せて狙える2つの助成金
助成金は「単独」より「組み合わせ」で効果が高まります。正社員化とセットで検討したいのが、次の2領域です。
① 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
従業員に職務に関連する研修・訓練を実施すると、訓練にかかった経費と訓練期間中の賃金の一部が助成されます。2026年度(令和8年度)は、分割支給申請の導入など、企業にとって活用しやすい方向へ見直されました。「育ててから正社員化する」という流れをつくると、正社員化コースとの相乗効果が期待できます。
なお、リールゲイトの推奨モデルでは、人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金(正社員化コース)を組み合わせ、1名あたりの実質的な受け取り目安が約55万円になるケースもあります。ただしこれはあくまで推奨モデルであり、対象者・企業の状況・制度改定によって金額は変わります。
② 賃金・処遇改善/「年収の壁」への対応
パート等の基本給を引き上げる「賃金規定等改定コース」など、賃金・処遇の改善を支援する枠組みもあります。「年収の壁」対応については、従来の社会保険適用時処遇改善コース(令和7年度末で終了)から、2026年4月に新設された「短時間労働者労働時間延長支援コース」へ移行しています。最低賃金の引き上げに合わせて賃金体系を見直すなら、これらの併用も検討価値があります。
申請でつまずかない5ステップ
正社員化コースは、「取り組む"前"の準備」で成否が決まります。中小企業がつまずきやすい流れを、5ステップで整理します。
- キャリアアップ計画の作成・提出:正社員転換を実施する"前"に、管轄の労働局へ計画を提出しておく必要があります(後出しは不可)。
- 就業規則等の整備:正社員転換の制度・要件を、就業規則や労働協約に明記します。
- 正社員転換の実施:規定に基づいて、対象者を正社員へ転換します。
- 転換後6か月の賃金支払い:転換後、6か月分の賃金を支払います(一定以上の賃金増額などの要件あり)。
- 支給申請:6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に申請します。
最大のポイントは、①の計画提出が「転換前」であること。ここを外すと、要件を満たしていても受給できません。
よくある失敗と対策
- 計画を出す前に転換してしまう:もっとも多い失敗です。採用・転換の"前"に計画提出を済ませましょう。
- 就業規則の整備漏れ:転換制度が規定に無いと対象外に。事前の整備が必須です。
- 賃金要件の未達:転換前後で必要な賃金増額を満たしているか、事前にシミュレーションを。
- 申請期限切れ:6か月分の賃金支払後、2か月以内。カレンダーで逆算管理を。
まとめ
キャリアアップ助成金・正社員化コースは、非正規から正社員への転換で、中小企業なら1人あたり最大80万円(有期→正規・重点支援対象者)が受け取れる、返済不要の制度です。2026年度は「情報公表加算」も新設され、人材育成や賃金改善の助成金と組み合わせれば効果はさらに高まります。最低賃金の上昇局面だからこそ、"人件費の増加を国の支援で相殺する"という設計が有効です。ただし金額・要件は制度改定で変わるため、着手前の最新情報の確認と、計画提出のタイミングにはくれぐれもご注意ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 助成金は本当に返済不要ですか?
A. はい。融資ではなく、要件を満たせば支給される制度です。原則として返済の必要はありません。
Q. パート1人でも申請できますか?
A. 要件を満たせば可能です。事業所単位で年間の上限人数が定められているコースもあり、採用が続く会社ほど活用の幅が広がります。
Q. いくらもらえるか、先に知りたいのですが。
A. 対象者の区分(重点支援対象者かどうか)や転換パターンで変わります。自社のケースは、要件確認とあわせて試算してもらうのが確実です。
Q. 忙しくて申請の手間が心配です。
A. 計画提出・就業規則の整備・申請書類など、準備は多岐にわたります。要件確認から書類まで、支援を受けながら進めるのが安全です。
返済不要の雇用助成金、まずは"使えるか"の確認から|助成金カウンセリング
「自社が対象になるのか」「いくらもらえるのか」を、制度改定を踏まえて整理するのが第一歩です。有限会社リールゲイトの助成金カウンセリングは、約20年の実績をもとに、雇用助成金(厚生労働省の助成金)の活用を初回無料でご相談いただけます。
- 狙い目はスタッフの採用時・新規開業時。正社員化・人材育成・賃金改善など、スタッフに関するプランを中心にご提案します。
- 助成金は従業員一人ひとりが対象。事業所ごとに年間で使える上限があり、採用が多い会社ほど有利です。
- 流れは、お問い合わせ → 電話ヒアリング(約15分)→ カウンセリング(訪問/Zoom・約60分)→ その場で結果をご回答。
「まだ検討段階」という方でも大丈夫です。まずはご相談だけでも、お気軽にどうぞ。
参考文献・出典
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687992.pdf (参照日:2026年7月23日)
- 厚生労働省「事業主の皆さまへ キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001687993.pdf (参照日:2026年7月23日)
- 補助金ポータル「キャリアアップ助成金とは?【2026年・令和8年】全コースの支給額と対象事業者を解説」 https://hojyokin-portal.jp/columns/career-up_summary (参照日:2026年7月23日)
- 補助金ポータル「【年収の壁 助成金】社会保険適用時処遇改善コースの要件と助成額」 https://hojyokin-portal.jp/columns/careerup_hokentekiyou_kaizen (参照日:2026年7月23日)
- freee「【2026年度版】人材開発支援助成金とは?各コースの要件、申請の流れを解説」 https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/human-resources-development-subsidy/ (参照日:2026年7月23日)
- Googleトレンド(日本・過去30日)「キャリアアップ助成金」関連キーワード・関連トピック https://trends.google.com/trends/explore?geo=JP&date=today%201-m&q=キャリアアップ助成金 (参照日:2026年7月23日)
※本記事の支給額・要件・締切等は2026年7月23日時点の情報です。助成金は制度改定が頻繁に行われるため、実際の申請にあたっては、厚生労働省の最新パンフレットおよび管轄の労働局・ハローワークで必ず最新の要件をご確認ください。




