「求人サイトにお金をかけているのに、応募が来ない」。大阪で中小企業の経営者とお話ししていると、この相談を本当によくいただきます。

ただ、応募が止まっている場所は求人票の中とはかぎりません。求人票を見た人が、その直後に会社名で検索して開くページ——つまり自社のホームページかもしれないのです。

そして「採用のためにホームページへ何を書けばいいのか」は、実は厚生労働省がかなり具体的に示しています。本記事では、その中身と、大阪の中小企業が今日から手をつけられる順番を整理します。

この記事でわかること

  • 求職者が「いつ」企業のホームページを見ているのか(調査データ)
  • 若者雇用促進法にもとづく「職場情報」の具体的な項目と、厚労省が望ましいとする公表方法
  • 既存のホームページに採用情報を足していく実務の手順
  • 公表した情報が、助成金やユースエール認定にもつながる理由
  • 採用ページを「作って終わり」にしないための更新の考え方

応募者は、求人票を見たあとに会社名で検索している

まず、求職者がホームページを見るタイミングを押さえておきます。

株式会社マイナビが直近3年以内にアルバイトの仕事を探した人を対象に行った調査では、85.9%が企業のホームページ・採用サイトを閲覧すると回答しています。さらに閲覧するタイミングを聞くと、「応募を検討するタイミング」が90.9%、「面接の準備をするタイミング」が40.6%でした(マイナビバイト公式メディア ナレビ|求職者の85.9%が「採用サイト」をチェック)。

この調査はアルバイト・パートの求職者が対象なので、正社員採用にそのまま当てはめることはできません。それでも示唆ははっきりしています。応募するかどうかを迷っている、まさにその瞬間に、人はホームページを開いているということです。

同じ調査では、応募を検討する際にホームページを見た人の約7割が「サイトの情報により応募意欲が増す」と答えています。裏を返せば、そこで見つかる情報が薄ければ、意欲は増さないまま離脱するということでもあります。

求人媒体の原稿をどれだけ磨いても、この「検索して確かめる」一手間は消えません。だからこそ、求人票の外側にあるホームページが、応募数に効いてきます。

なお、そもそも自社サイトに人が来ていない、問い合わせが発生していないという段階であれば、採用以前の課題が残っている可能性があります。その場合は「ホームページ集客できない」原因チェックリスト|大阪の中小企業向け12項目を先にご覧ください。

何を書くかは、すでに国が示している

「採用ページを充実させろと言われても、何を書けばいいのか分からない」。ここで手が止まる会社は多いはずです。

実は、書くべき内容の型はすでに公的に整理されています。若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)にもとづく職場情報の提供制度です。

この制度では、新卒者等の求人を出す企業に対し、応募者などから求めがあった場合、次の3類型それぞれについて1つ以上の情報を提供することが義務づけられています(厚生労働省|職場情報の提供制度)。

(ア)募集・採用に関する状況

  • 直近3事業年度の新卒採用者数・離職者数
  • 直近3事業年度の新卒採用者数の男女別人数
  • 平均勤続年数

(イ)職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況

  • 研修の有無および内容
  • 自己啓発支援の有無および内容
  • メンター制度の有無
  • キャリアコンサルティング制度の有無および内容
  • 社内検定等の制度の有無および内容

(ウ)職場定着に関する取組の実施状況

  • 前事業年度の月平均所定外労働時間の実績
  • 前事業年度の有給休暇の平均取得日数
  • 前事業年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
  • 役員に占める女性の割合、管理的地位にある者に占める女性の割合

厚労省は「ホームページでの公表」を望ましいとしている

ここが本題です。厚生労働省は同じページで、情報提供の方法についてこう書いています。

企業がホームページでの公表、会社説明会での提供、求人票への記載などにより、自主的・積極的に情報提供を行うことが望ましい

つまり、求められてから個別に答えるのではなく、先にホームページへ載せておくことが推奨されているわけです。

これは企業側にとっても合理的です。求めに応じて都度メールで返す運用は、担当者の手間が読めません。ホームページに常設しておけば、問い合わせ対応が減り、同時に応募を検討している人がその場で確認できます。義務への対応と採用広報が、同じ1ページで片づく形になります。

なお、この制度の対象は新卒者等の求人ですが、掲載する情報そのもの——勤続年数、残業時間、有給取得日数、研修制度——は、中途採用やパート採用を検討している人にとっても知りたい情報です。新卒採用をしていない会社でも、この一覧は「採用ページの目次」としてそのまま使えます。

大阪の中小企業が、今日から手をつける順番

いきなり採用サイトを別途制作する必要はありません。既存のホームページに足していく前提で、順番をつけます。

手順1:社内にある数字を拾い出す

上の項目のうち、平均勤続年数・所定外労働時間・有給取得日数は、勤怠と賃金台帳を見れば出てきます。まずは「今ある数字で書ける項目」だけを埋めること。全項目を揃えようとすると、たいてい着手しないまま終わります。

手順2:数字が悪い項目こそ、背景を添える

残業が多い、離職者が出た。こうした数字を隠すと、結局は入社後に分かって早期離職につながります。数字はそのまま出し、その横に「いま何を変えているか」を書くのが現実的です。繁忙期に偏りがあるなら、その事実と対策を一緒に書く。読み手が知りたいのは完璧さではなく、実態と誠実さです。

手順3:働く人の言葉を1本足す

制度の一覧は信頼を担保しますが、働くイメージまでは伝えません。入社1〜3年目の社員に「入る前に不安だったこと」「実際どうだったか」を聞いて、そのまま載せる。長文である必要はありません。

手順4:求人媒体と自社サイトを行き来させる

求人原稿の会社紹介欄に、採用情報ページのURLを入れておきます。媒体の文字数制限で削った情報を、自社サイト側で受け止める設計にします。

手順5:自社の職種の「採用しにくさ」を把握しておく

ここは大阪の事情です。大阪労働局は労働市場データとして、職種別の有効求人倍率や求人・求職の賃金を毎月公表しています。職種によって、応募が集まりやすいかどうかは大きく違います。自社の職種がどの水準にあるかを先に見ておくと、ホームページで補うべき情報の量に見当がつきます。求人倍率が高い職種ほど求職者は複数社を比較しており、ホームページの情報量がそのまま選ばれる理由になりやすい領域です。

公表した情報は、助成金や認定にもつながる

ホームページで職場情報を公表する作業は、採用だけで終わりません。

ひとつはユースエール認定制度です。若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況が優良な中小企業(常時雇用する労働者300人以下)を厚生労働大臣が認定する制度で、認定されるとハローワーク等での重点的PR、認定マークの使用、公共調達における加点評価などのメリットがあります。認定基準では、離職率、時間外労働、有給休暇取得率、人材育成方針・教育訓練計画の策定などが問われます。これは、先ほどの職場情報とほぼ同じ土俵の話です。情報を整理する過程で、自社が認定に届きそうかどうかも見えてきます。

もうひとつは助成金です。たとえばキャリアアップ助成金では、取り組み内容を自社ホームページで公表することが加算の要件になっているコースがあります。詳しくはキャリアアップ助成金|自社HP公表で20万円上乗せ・申請前チェックリストで整理しています。「ホームページに書く」という同じ作業が、採用・認定・助成金の3方向に効いてくるわけです。

ただし制度の要件や金額は改定されます。自社が対象になるかどうかは、必ず最新の一次情報か、助成金カウンセリングのような相談窓口で確認してください。

採用ページは「作って終わり」が一番もったいない

ここまでの内容を反映したページを作ったとして、次に起きるのは「更新されないまま数年経つ」です。

職場情報は年度で変わります。平均勤続年数も、有給取得日数も、あくまで昨年度の数字です。更新されていないページは、求職者から見れば「この会社、動いていないのでは」というサインになります。

もうひとつ、検索側の事情もあります。会社名で検索したときに自社サイトが出るのは当然として、「大阪 ○○(職種) 求人」のような検索で見つけてもらうには、ページが1枚あるだけでは足りません。更新されているページが増えるほど、検索エンジンにも生成AI検索にも、その会社の情報が読み取れる状態になります。

この点は自社でも検証しています。ブログ毎日更新を70日やってみた|順位がつく記事とつかない記事の差で、実際に順位がついた記事とつかなかった記事の違いをまとめました。結論だけ言えば、量を出したから上がるのではなく、読み手が実際に検索している疑問に具体的に答えた記事だけが拾われます。

まとめ

  • 求職者は応募を検討するタイミングで企業のホームページを開いている。応募の可否は求人票の外側でも決まっている
  • 何を書くかは、若者雇用促進法の「職場情報」3類型が実用的な目次になる
  • 厚生労働省は「ホームページでの公表」を望ましい方法として明記している
  • 今ある数字から埋め、悪い数字には背景を添える。完璧さより実態と誠実さ
  • 公表作業はユースエール認定や助成金にも接続する
  • 作って終わりにせず、年度ごとの更新と記事の積み上げで「見られる状態」を保つ

よくある質問

Q. 新卒採用をしていなくても、職場情報を載せる意味はありますか?

A. 法律上の提供義務は新卒者等の求人が対象ですが、掲載内容そのもの(勤続年数、残業時間、有給取得日数、研修制度など)は中途・パートの応募検討者にとっても判断材料になります。採用ページの構成として流用する価値があります。

Q. 離職者が出た年度の数字は、載せないほうがいいのでは?

A. 伏せても面接や入社後に分かります。数字を出したうえで、要因と現在の対応を並記するほうが、結果的にミスマッチによる早期離職を減らせます。

Q. 採用サイトを別に作るべきですか?

A. まずは既存サイト内に採用情報のページを用意し、求人媒体からリンクさせるところから始めるのが現実的です。更新が回る体制ができてから、分けるかどうかを検討しても遅くありません。

Q. 項目がすべて揃わないと公表できませんか?

A. 制度上の義務は3類型それぞれで1項目以上です。厚生労働省は、義務にとどまらない積極的な情報提供を推奨しています。揃った項目から順に載せて構いません。

Q. 公表した数字は毎年更新が必要ですか?

A. 「前事業年度」「直近3事業年度」を前提にした項目が多いため、年度が変われば実態とずれます。年1回の更新時期をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

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参考文献・出典