採用したいけれど、いざ人を入れて合わなかったらどうしよう——中小企業の経営者から、これは本当によく聞くご相談です。

その「見極めの3か月」に、国がお金を出す制度があります。厚生労働省のトライアル雇用助成金(一般トライアルコース)です。

ただし、この制度には「採用してからでは絶対に間に合わない」条件がひとつあります。今回はそこを軸に、採用を動かす前に確認しておく9項目を整理しました。

この記事でわかること

  • トライアル雇用助成金の仕組みと、支給額(月4万円・最長3か月)の考え方
  • 対象になる求職者・ならない求職者の線引き
  • 「ハローワーク等の紹介」という最重要条件が意味すること
  • 採用を動かす前に確認する9項目チェックリスト
  • トライアル雇用のあとに続く、正社員化の助成金への流れ

トライアル雇用助成金とは|「お試し3か月」を国が支える制度

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、無期雇用契約へ移行することを前提に、原則3か月間試行雇用する事業主に対して支給される助成金です。制度の目的は、求職者の早期就職の実現と雇用機会の創出にあります。詳細は厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)で公開されています。

ポイントは「お試し期間そのものを制度として認めている」ことです。書類と面接だけでは分からない適性を、3か月かけて双方が確認できる。そのあいだの人件費負担を、国が一部肩代わりする——そういう設計です。

採用のミスマッチは、中小企業ほどダメージが大きくなります。1人辞めれば採用コストも教育時間も消えるうえ、現場の士気にも響く。トライアル雇用は、そのリスクを制度として下げる手段だと考えると分かりやすいはずです。

支給額は月4万円・最長3か月。ひとり親なら月5万円

支給対象者1人につき月額4万円。対象労働者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は月額5万円です。支給対象期間は雇入れの日から1か月単位で最長3か月なので、上限は12万円(ひとり親は15万円)。この3か月分は、まとめて1回で支給されます。

注意したいのは、実際に就労した日数が予定に満たない月の扱いです。就労予定日数に対する実就労日数の割合(A)に応じて、月額が段階的に下がります。

実就労日数の割合(A)

月額

月額(ひとり親の場合)

A≧75%

40,000円

50,000円

75%>A≧50%

30,000円

37,500円

50%>A≧25%

20,000円

25,000円

25%>A>0%

10,000円

12,500円

A=0%

0円

0円

つまり「席だけ用意して実務がない」状態では減額されます。3か月を見極め期間として本気で使うことが、結果的に支給額も最大化する設計になっています。

対象になる求職者・ならない求職者

ここが最も誤解の多いところです。トライアル雇用助成金は「誰を採用しても使える」制度ではありません。対象労働者は、次のすべてに当てはまる必要があります。

  • 1週間の所定労働時間30時間以上の無期雇用による雇入れを希望していること
  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等に求職申込みをしていること
  • 紹介日時点で、安定した職業に就いていない/学校に在籍していない など

そのうえで、次のいずれかに該当することが求められます。

  1. 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上の離職・転職を繰り返している
  2. 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている(パート・アルバイトを含め一切就労していないこと)
  3. 妊娠、出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
  4. 生年月日が1968(昭和43)年4月2日以降で、安定した職業に就いておらず、ハローワーク等で担当者制の個別支援を受けている
  5. 就職の援助にあたって特別な配慮を要する(生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者)

なお令和5年12月1日以降、補完的保護対象者も対象に加わっています。制度は改正が重なっているため、判断は必ず最新の一次情報で行ってください。

採用を動かす前に確認する9項目チェックリスト

ここからが本題です。次の9項目は、求人票を出す前・面接をする前に確認しておくべき内容です。順番を間違えると、あとから取り返せません。

  1. 雇用保険の適用事業所になっているか。雇用関係助成金は雇用保険二事業が財源です。ここが土台になります。
  2. 労働保険料をきちんと納付しているか。滞納があると受給できません。
  3. 過去に重大な労働関係法令違反や不正受給がないか。共通要件は厚生労働省|雇用関係助成金共通の要件(PDF)にまとまっています。
  4. 募集する仕事を、週30時間以上の無期雇用の求人として設計できるか。「まずはパートで」という設計にすると対象外になります。
  5. その求人を、ハローワーク等の紹介ルートに乗せられるか。これが最重要条件です(次章で詳述)。
  6. 採用したい人が、対象労働者の要件に当てはまるか。知人の紹介や直接応募では、要件を満たしていても紹介日が存在しません。
  7. 3か月間、実務を任せる体制と教育担当を用意できるか。実就労日数が支給額に直結します。
  8. 出勤簿・賃金台帳・雇用契約書を整えて保管できるか。書類の不備や添付漏れがあると受理されません。
  9. 3か月後の「無期雇用への移行」を前提に話ができているか。最初から短期戦力として使うつもりなら、この制度は合いません。

この9項目のうち、4〜6は採用活動の設計そのものに関わります。だからこそ「採用が決まってから助成金を調べる」と間に合わないのです。この落とし穴については雇用助成金の落とし穴|中小企業が「採用してから」では遅い理由でも詳しく書いています。

最重要条件は「ハローワーク等の紹介」

雇入れの条件として、ハローワーク等の紹介により雇い入れることが明記されています。ここでいうハローワーク等には、民間の職業紹介事業者等も含まれます。

逆に言えば、次のケースは原則として対象になりません。

  • 自社サイトや求人媒体からの直接応募で採用した
  • 知人・取引先からの紹介で採用した
  • すでに働いてもらっている人を、あとから切り替えた

「いい人が見つかったので採用した。そのあとで助成金を知った」——この順番になった時点で、トライアル雇用助成金は使えません。制度が求めているのは「就職が困難な求職者に、公的な紹介ルートを通じて就業機会をつくること」であり、結果ではなくプロセスに対して支給されるからです。

助成金を使う前提で採用を考えるなら、求人票をハローワークに出すところから設計を始める。これが実務上いちばん大事なポイントです。

申請の流れと、そのあとに続く道

大まかな流れは次のとおりです。

  1. ハローワーク等にトライアル雇用求人を提出する
  2. ハローワーク等の紹介を受け、対象者を雇い入れる(紹介日が起点になります)
  3. トライアル雇用開始後、実施計画書を提出する
  4. 原則3か月のトライアル雇用を実施する
  5. 終了後、支給申請を行う(電子申請にも対応しています)

支給申請には期限が定められています。期限や様式は改定されることがあるため、厚生労働省|トライアル雇用助成金リーフレット(事業主向け・PDF)と管轄の労働局・ハローワークで必ず最新版を確認してください。

そしてもうひとつ。トライアル雇用は、単体で終わらせるよりそのあとの正社員化まで見通すほうが効果的です。有期雇用から正社員へ転換した場合に使えるキャリアアップ助成金には、1事業所あたり年間20人まで申請できるコースもあります。採用の入口から定着までを一本の線で設計できると、受け取れる金額も、社内に残る人も変わってきます。

助成金と補助金の違いから整理したい方は、助成金と補助金の違いとは?返済不要の雇用助成金を採用時に活かす5ステップもあわせてご覧ください。

大阪・関西の中小企業が押さえておきたい視点

大阪府内はハローワークの拠点が多く、業種や地域によって求人倍率の傾向も大きく異なります。同じ「採用が難しい」でも、慢性的な人手不足の職種なのか、応募はあるが定着しないのかで、打ち手はまったく別物です。

トライアル雇用が効きやすいのは後者、つまり「応募はあるが、採ってみないと分からない」タイプの採用です。ブランクのある方、キャリアチェンジを考えている方は、書類だけで判断すると見送りになりがちですが、実際に働いてもらうと戦力になるケースが少なくありません。3か月という制度上の猶予は、そこを拾い上げるための時間だと考えてください。

制度の運用や必要書類の細かな取り扱いは、管轄の労働局・ハローワークによって案内が異なる場合があります。大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山のいずれの事業所であっても、まずは管轄窓口への確認が確実です。

まとめ

  • トライアル雇用助成金は、無期雇用への移行を前提とした原則3か月の試行雇用を支える制度
  • 支給額は月4万円(ひとり親は月5万円)、最長3か月で最大12万円(同15万円)
  • 実就労日数の割合に応じて月額が減額されるため、実務をきちんと任せることが前提
  • 対象労働者・雇入れ条件の要件は細かく、なかでもハローワーク等の紹介が絶対条件
  • 採用が決まってから調べるのでは遅い。求人票を出す前が勝負どころ

よくある質問(FAQ)

Q. 直接応募で採用した人を、あとからトライアル雇用に切り替えられますか。
A. 原則できません。ハローワーク等の紹介により雇い入れることが条件で、紹介日が制度の起点になるためです。

Q. パート・アルバイトの採用でも使えますか。
A. 一般トライアルコースは1週間の所定労働時間30時間以上が原則です(対象労働者が日雇労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者の場合は20時間以上)。短時間勤務前提の採用には向きません。

Q. 3か月経ったあと、必ず無期雇用にしなければいけませんか。
A. 制度は無期雇用への移行を前提としています。適性を見極めた結果として移行しない判断はあり得ますが、最初から移行させるつもりがないなら、この制度の趣旨には合いません。

Q. 助成金はいつ振り込まれますか。
A. 支給対象期間中の各月の月額が合計され、まとめて1回で支給されます。申請から入金までは審査期間があるため、当座の資金として当てにしない設計が安全です。

Q. 他の助成金と併用できますか。
A. 制度の組み合わせによります。同一の取り組み・同一の対象者について重複して受給できないケースがあるため、事前に個別確認が必要です。

助成金の使いどころが分からないときは、まずご相談ください

助成金の情報は厚生労働省のサイトにすべて公開されています。それでも活用が進まないのは、「自社の採用計画に、どの制度がどの順番で当てはまるのか」の判断が難しいからです。制度は毎年のように改定され、要件はコースごとに細かく分かれています。

有限会社リールゲイトの助成金カウンセリングは、返済義務のない雇用助成金(厚生労働省の助成金)の活用を支援する初回無料のご相談です。約20年、大阪・北堀江から中小企業の採用と雇用環境づくりに関わってきました。

  • 狙い目はスタッフの採用時・新規開業時。「教育する」「雇用スタイルを見直す」「賃金を改善する」といったスタッフに関するプランに注目します
  • 助成金はスタッフ一人ひとりに支給される仕組み。事業所ごとに年間最大20名まで使えるプランもあり、毎年採用がある会社ほど有利に働きます
  • 流れはシンプル。お問い合わせ → 電話15分の簡単ヒアリング → 訪問またはZoomで60分のカウンセリング → その場で結果をお答えします

「うちは対象になるのか」だけでも構いません。まずはご相談だけでもお気軽にどうぞ。

参考文献・出典

※支給額・要件・申請期限は制度改定により変更されることがあります。実際の申請にあたっては、必ず管轄の労働局・ハローワークで最新の情報をご確認ください。