厚生労働省が2026年7月31日に公表した最新の調査で、男性の育児休業取得率が50.9%となり、初めて5割を超えました。前年度は40.5%ですから、1年で10ポイント以上の上昇です。
「うちのような小さな会社で、男性社員が育休を取ったら現場が回らない」——そう感じている経営者ほど、次に誰かが抜けたときの打撃は大きくなります。
その「回らない」を埋めるための人件費に、返済不要の助成金が用意されています。両立支援等助成金です。しかも2026年(令和8年度)から、中小企業に有利な方向で複数のコースが改正されました。
この記事でわかること
- 男性育休が5割を超えた最新データと、中小企業にとっての実務的な意味
- 両立支援等助成金6コースの全体像と、それぞれの支給額
- 2026年(令和8年度)の改正点。とくに中小企業の対象範囲が広がったポイント
- 自社がどのコースを狙うべきかを見分ける3つの分かれ道
- 申請前に必ず整えておくべき書類と、大阪の相談窓口
男性の育児休業取得率は50.9%。もはや「うちには関係ない」では済まない
厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(2026年7月31日公表)によると、育児休業取得者の割合は次のとおりです。
- 女性:88.3%(前年度86.6%)
- 男性:50.9%(前年度40.5%)
この数字は、常用労働者5人以上の事業所を対象にした調査結果です。大企業だけの話ではありません。詳しい定義や調査方法は厚生労働省の報道発表資料で確認できます。
経営者にとって重要なのは「取得率が上がった」という事実そのものより、その先にある変化です。求職者は入社前に育休の実績を見ます。取れない会社は、採用の入り口で選ばれなくなります。
実際、Googleトレンドで直近1週間の「育児休業」の関連キーワードを見ると、「育児休業給付金 もらえない場合」といった、制度が使えるかどうかを不安に思う検索が急上昇しています。働く側は、かなり具体的なところまで調べたうえで会社を選んでいます。
一方で、中小企業の現実的な悩みは「制度をつくること」ではなく「抜けた穴をどう埋めるか」です。両立支援等助成金は、まさにそこにお金を出す制度です。
両立支援等助成金とは|6つのコースの全体像
両立支援等助成金は、仕事と育児・介護などを両立できる職場環境づくりに取り組む事業主を支援する、厚生労働省の雇用関係助成金です。申請先は都道府県労働局で、返済の必要はありません。
2026(令和8)年度は、次の6コースで構成されています(2026年度 両立支援等助成金リーフレット(厚生労働省・都道府県労働局)より)。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金):男性労働者が育児休業を取得した場合
- 介護離職防止支援コース:介護休業の取得・職場復帰を支援した場合
- 育児休業等支援コース:育休復帰支援プランをつくり、円滑な取得・復帰を実現した場合
- 育休中等業務代替支援コース:業務を代わりに行う社員に手当を出す、または代替要員を新規雇用した場合
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース:育児期の柔軟な働き方の制度を複数導入した場合
- 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース:不妊治療・月経・更年期に対応する制度を整備し、利用された場合
主な支給額を整理すると次のようになります。
- 出生時両立支援コース①(男性の育休取得):1人目20万円、2・3人目各10万円
- 出生時両立支援コース②(男性の育休取得率の上昇等):60万円(1事業主1回限り)
- 育児休業等支援コース:育休取得時30万円+職場復帰時30万円
- 育休中等業務代替支援コース(新規雇用):代替期間7日以上で9万円、1年以上で81万円
- 育休中等業務代替支援コース(手当支給等・育児休業):業務体制整備費 最大20万円+業務代替手当は支給額の4分の3(最大240万円)
- 介護離職防止支援コース(介護休業):40万円、介護休暇制度の有給化は30万円
- 柔軟な働き方選択制度等支援コース:制度3つ導入で20万円、4つ以上で25万円
- 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース:各区分30万円
ここで押さえておきたいのは、これらが「制度をつくっただけ」では出ないという点です。ほぼすべてのコースで、対象となる社員が実際に制度を使ったことが支給の条件になっています。就業規則に書いて終わり、では受け取れません。
助成金と補助金の性格の違いや、雇用助成金の基本的な考え方については助成金と補助金の違いとは?返済不要の雇用助成金を採用時に活かす5ステップで整理しています。あわせてご覧ください。
2026年(令和8年度)の改正点|中小企業に効くのはここ
令和8年度は4月から複数のコースで制度が変わりました。厚生労働省・都道府県労働局が公表している令和8年度改正内容をもとに、中小企業に関係の深いところだけを抜き出します。
出生時両立支援コース|対象になる会社の範囲が広がった
「男性労働者の育児休業取得率の上昇等」(旧・第2種)の支給対象が、業種にかかわらず常時雇用する労働者が300人以下の事業主へ拡充されました。これまで業種ごとの規模要件で対象外だった会社にも、道が開けたことになります。
また、男性育休取得率を計算する際、事実婚状態の男性労働者の育児休業も対象になりました。実態に即した見直しです。
介護離職防止支援コース|「介護休暇の有給化」が独立して30万円に
介護休暇制度の有給化について、独立した助成金となりました。有給の介護休暇制度を導入し、要件を満たした事業主に1回限り30万円が支給されます。
さらに、介護休業や介護両立支援制度の利用者が有期雇用労働者の場合は10万円が加算されます。パート・契約社員の比率が高い会社にとっては見逃せない変更です。
一方で、介護両立支援制度のメニューから「所定外労働の制限制度」と「深夜業の制限制度」が削除されました。この2つを前提に計画を立てていた場合は、組み直しが必要です。
育休中等業務代替支援コース|「1年以上」の区分が新設、81万円
中小企業にとって、今回もっともインパクトが大きいのがこのコースです。
- 手当支給等(育児休業中・短時間勤務)に係る労働者数要件が撤廃
- 新規雇用(育児休業)の対象が、業種にかかわらず常時雇用300人以下の事業主へ拡充
- 手当支給等(育児休業)の業務代替手当について、助成金の算定対象となる手当支給期間が2年間に延長
- 新規雇用(育児休業)に「1年以上」の区分を新設し、該当する事業主に81万円(プラチナくるみん認定事業主は99万円)を支給
1年間の産休・育休を取る社員の代わりに1人採用する、という中小企業でよくあるケースが、そのまま最上位の区分に当てはまります。
柔軟な働き方選択制度等支援コース|障害児等要配慮支援加算が新設
障害児や医療的ケア児を養育する労働者が、柔軟な働き方選択制度または子の看護等休暇制度を利用できる期間を18歳になる年度末まで引き上げた場合、20万円が加算されます。
あわせて、子の看護等休暇制度の有給化については、対象労働者が実際に制度を利用したことが支給要件に追加されました。「制度をつくるだけでは出ない」という方向性がここでも徹底されています。
なお、各コースごとに定める支給要件を満たした日等によっては、令和7年度以前の支給要領が適用される場合があります。改正前後にまたがる案件は、必ず労働局に確認してください。
自社はどのコースを狙うべきか|3つの分かれ道で比較する
6コースを全部読み込む必要はありません。自社の状況を、次の3つのどれかに当てはめてみてください。
分かれ道1|これから男性社員に子どもが生まれる予定がある
狙うのは出生時両立支援コース①です。対象社員が子の出生後8週間以内に育休を開始し、1人目なら5日以上、2人目なら10日以上、3人目なら14日以上取得することが条件。1人目で20万円です。
ただし、前提として「育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置を複数実施していること」「業務代替者の業務見直しに係る規定等を策定していること」が求められます。子が生まれてから慌てて着手しても間に合いません。
分かれ道2|長期の育休に入る社員がいて、穴を埋めたい
狙うのは育休中等業務代替支援コースと育児休業等支援コースの組み合わせです。
- 代替要員を新規採用・派遣受入するなら「新規雇用」区分。代替期間1年以上で81万円
- 既存社員に業務を振り分けて手当を出すなら「手当支給等」区分。支給した手当額の4分の3(最大240万円)
- あわせて育休復帰支援プランを作成・実施すれば、育児休業等支援コースで取得時30万円+復帰時30万円
育休中等業務代替支援コースは①〜③あわせて1年度10人までという上限があり、初回から5年間の支給という枠組みです。毎年出産・育休が発生する規模の会社ほど、累計額は大きくなります。
分かれ道3|親の介護を抱えた社員がいる
狙うのは介護離職防止支援コースです。介護休業の取得+職場復帰で40万円。介護両立支援制度の導入・利用で20〜25万円。今年度からは介護休暇の有給化で30万円が独立して受け取れます。
介護は育児と違って予告なく始まります。ベテラン社員が突然抜けるリスクを、制度と資金の両面で先回りしておく意味は小さくありません。
申請前にやること|「就業規則」と「面談記録」で決まる
両立支援等助成金の申請でつまずく原因は、ほぼ書類です。実際にやるべきことを順番に並べます。
- 就業規則・育児介護休業規程を最新の法令に合わせて改定する。助成金の要件以前に、法定の制度が整備されていなければ土俵に上がれません。
- 雇用環境整備の措置を複数実施する。研修、相談窓口の設置、取得事例の収集・提供、方針の周知などから複数を選んで実施し、記録を残します。
- 業務代替に関する規定を就業規則等に定める。手当支給等の区分を狙うなら、手当制度の根拠規定が必須です。
- 対象社員と面談し、支援プランを作成する。育児休業等支援コースは「育休復帰支援プラン」、介護離職防止支援コースは「仕事と介護の両立支援プラン」が要件です。面談は記録を残してください。
- 休業開始日の前日までに業務の引き継ぎを実施する。育児休業等支援コースの育休取得時は、この引き継ぎ実施が明確な要件です。
- 復帰後、原職等に復帰させ、継続雇用する。育児休業等支援コースの職場復帰時は、申請日までに6か月以上の継続雇用が必要です。
- 支給申請期間内に、管轄の労働局へ申請する。期間を1日でも過ぎると受け付けられません。
この順番を見ればわかるとおり、助成金の勝負は「社員が休みに入る前」にほぼ決まっています。この考え方は雇用助成金全般に共通するもので、雇用助成金の落とし穴|中小企業が「採用してから」では遅い理由でも詳しく解説しています。
また、育休から復帰した社員の雇用形態を見直したり、パート社員を正社員に転換したりする場面ではキャリアアップ助成金2026|正社員化で最大80万円との併用検討も現実的な選択肢になります。
大阪の中小企業が押さえておきたい窓口と制度
両立支援等助成金の申請先は、本社等の所在地を管轄する都道府県労働局です。大阪府内の事業所であれば大阪労働局 雇用環境・均等部が窓口になります(大阪市中央区大手前4-1-67 大阪合同庁舎第2号館)。制度の詳細やセミナー動画は大阪労働局の雇用均等関係ページにまとまっています。
あわせて大阪府には、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し情報公表を行う企業を認証する「男女いきいきプラス」事業者認証制度があります。認証自体は助成金ではありませんが、両立支援等助成金の要件として整える書類と重なる部分が多く、採用時のアピール材料にもなります。関西の中小企業では、助成金の申請準備をきっかけにこうした認証まで一気に取りにいく会社もあります。
まとめ
- 男性の育児休業取得率は50.9%。中小企業でも「取れる前提」で設計する時期に入った
- 両立支援等助成金は6コース。育児・介護・柔軟な働き方・不妊治療などをカバーする
- 令和8年度改正で、常時雇用300人以下への対象拡充、育休代替の新規雇用「1年以上」81万円区分の新設など、中小企業に有利な変更が入った
- どのコースも「制度をつくるだけ」では出ない。実際の利用と、面談・引き継ぎの記録が要る
- 準備は社員が休みに入る前。就業規則の改定と雇用環境整備が最初の一歩
よくある質問(FAQ)
Q. 社員数が少なくても申請できますか?
A. コースによります。育休中等業務代替支援コースの「手当支給等」区分は令和8年度から労働者数要件が撤廃され、企業規模要件がなくなりました。「新規雇用」区分と出生時両立支援コースの取得率上昇等は、業種を問わず常時雇用300人以下の事業主が対象です。詳細は必ず最新の支給要領で確認してください。
Q. 男性社員が5日だけ育休を取った場合も対象になりますか?
A. 出生時両立支援コース①は、1人目であれば子の出生後8週間以内に開始する5日以上の育児休業が要件です。ただし雇用環境整備の措置を複数実施していることなど、他の要件も同時に満たす必要があります。
Q. 複数のコースを同時に使えますか?
A. 使える組み合わせと、使えない組み合わせがあります。たとえば出生時両立支援コースの対象となった同一の育児休業について、育児休業等支援コース(育休取得時等)との併給はできません。組み合わせの可否は事前に確認するのが安全です。
Q. 支給額や要件はこの記事のままですか?
A. 雇用関係助成金は年度ごとに見直されます。本記事は2026年8月23日時点で公表されている情報に基づいています。申請時点の最新の支給要領を必ずご確認ください。
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有限会社リールゲイトは、返済義務のない厚生労働省の雇用助成金について、約20年にわたり中小企業の活用をお手伝いしてきました。両立支援等助成金のように「休みに入る前の準備」が結果を左右する制度は、早い段階でのご相談が効いてきます。
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参考文献・出典
- 厚生労働省|「令和7年度雇用均等基本調査」結果を公表します(報道発表資料・令和8年7月31日)(2026年8月23日参照)
- 厚生労働省|子ども・子育て両立支援等助成金のご案内(2026年8月23日参照)
- 厚生労働省・都道府県労働局|2026(令和8)年度 両立支援等助成金のご案内(リーフレットNo.14)(2026年8月23日参照)
- 厚生労働省 愛媛労働局|令和8年度 両立支援等助成金改正内容について(2026年8月23日参照)
- 厚生労働省 大阪労働局|雇用均等関係(男女均等、育児・介護、パート)(2026年8月23日参照)
- 大阪府|「男女いきいきプラス」事業者認証制度について(2026年8月23日参照)
- Googleトレンド(日本・過去7日間「育児休業」/過去30日間「助成金」の関連キーワード・関連トピック)を2026年8月23日に参照し、検索需要の傾向確認に使用しました。
※本記事は制度の概要をわかりやすく整理したものです。支給額・支給要件・申請期間は改定される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず最新の支給要領および管轄労働局の案内をご確認ください。




