「厚生労働省の委託を受けています」「助成金の無料診断・無料査定をします」――こうした勧誘のFAXや電話が、中小企業の事務所に届くことがあります。
しかし厚生労働省は、特定の事業者に助成金の勧誘を委託していません。さらに、申請書類に誤りや虚偽があれば、書類を作成したのが誰であっても責任を問われるのは事業主です。
この記事では、厚労省・労働局が公表している注意喚起をもとに、助成金の勧誘を受けたときに経営者が確認すべきポイントを整理します。
この記事でわかること
- 厚生労働省が注意喚起している「助成金の勧誘」の典型パターン
- 不正受給と判断された場合に事業主が受けるペナルティ
- 代理人や社労士に任せても、責任が事業主に残る理由
- 勧誘を受けたときに確認したい5つのチェック項目
- 大阪・関西の中小企業が最初に相談できる窓口
厚労省が警告する「助成金の無料診断」勧誘とは
厚生労働省の雇用関係助成金のページでは、「助成金の申請や、助成対象の診断及び受給額の無料査定をする」といった内容の書面を送り付ける勧誘が報告されていると注意喚起しています。そのうえで、厚生労働省はこの勧誘に関与していない、と明言しています。
また、厚生労働省・労働局・ハローワークが、特定の事業者に助成金の勧誘を委託することはない、とも示されています。つまり「国から依頼されて案内している」という説明は、そのまま信じてはいけません。
よくある勧誘の特徴
- 「無料診断」「無料査定」を前面に出す:受給額の見込みを先に示し、関心を引こうとする
- 国や厚労省の関係者のように見せる:委託・提携などの言葉で安心させようとする
- 急がせる:「今月中に申請しないと間に合わない」など、判断の時間を与えない
- 要件の説明が薄い:何のための制度かより、受給額の話が中心になる
もちろん、助成金の申請支援を行う事業者がすべて問題というわけではありません。社会保険労務士など、制度を理解したうえで適切に支援する専門家は多くいます。大切なのは、勧誘の言葉ではなく中身を確認することです。
不正受給と判断されると何が起きるか
厚生労働省が公表している不正受給の注意喚起(助成金勧誘に関する注意喚起リーフレット)には、次の内容が明記されています。
- 受給した助成金の返還を求められる
- 事業主名が原則として公表される
- 5年間、助成金が受けられなくなる
金銭面の損失にとどまらず、取引先や求職者から見える形で事業主名が公表される点は、中小企業にとって信用面のダメージが小さくありません。採用に力を入れている会社ほど、影響は大きくなります。
なお、返還額への加算や延滞金などの詳細は、制度や状況によって扱いが異なります。個別のケースは、必ず労働局やハローワークの案内で確認してください。
「任せたから大丈夫」は通用しない
大阪労働局が示している資料(雇用関係助成金の不正受給に関する注意喚起)では、経営コンサルタントを名乗る事業者に指南されて虚偽の申請書類を提出した場合でも、事業主が責任を問われる可能性があるとされています。
さらに、役員や従業員、社会保険労務士などの代理人、書類作成に関わった人が不正行為をした場合も、事業主の不正受給に該当すると示されています。
書類を作った人が誰であっても、申請の名義人は事業主。だからこそ、申請内容を事業主自身が理解しておく必要があります。
たとえば、実際には働いていない期間を働いたことにする、賃金台帳や出勤簿を整合しない形で整える、といった行為は、たとえ「通りやすくするための書き方」と説明されても不正にあたり得ます。「みんなやっている」という言葉も根拠になりません。
勧誘を受けたときの5つのチェック
- 誰が・どの立場で連絡してきたか:会社名・所在地・担当者名・資格の有無を確認する。「国の委託」という説明は鵜呑みにしない
- 受給額を先に言っていないか:事業所の状況を聞く前に金額だけを示すのは要注意。助成金は要件を満たして初めて対象になる
- 要件・期限の根拠が示されているか:厚労省の公式ページや労働局の資料など、一次情報を見せられるか
- 書類の内容を自社で説明できるか:賃金・勤務実態・雇用契約と矛盾がないか、自分の言葉で説明できる状態にする
- その場で契約を迫られていないか:一度持ち帰り、労働局やハローワークで確認する時間を取る
特に重要なのが3番目です。助成金は制度改定が多く、金額や要件は年度で変わります。「最新の公式情報で確認しましょう」と言える事業者かどうかは、一つの目安になります。
大阪・関西の中小企業がまず確認したい窓口
不安を感じたときは、各都道府県の労働局やハローワークに相談するよう、厚労省の資料でも案内されています。大阪府内の事業所であれば、大阪労働局やお近くのハローワークが相談先になります。
関西の中小企業では、採用や新規開業のタイミングで助成金に関心が高まり、そこに勧誘が重なるケースも考えられます。採用の予定が決まったら、採用してから調べるのではなく、採用の前に制度の考え方を確認するのが基本です。この点は、当社コラムの雇用助成金の落とし穴|「採用してから」では遅い理由でも解説しています。
助成金は「仕組みの理解」が先
雇用関係の助成金は、国が「何のために」用意した制度なのかを理解し、その目的に合う雇用環境を整えることが出発点です。制度の共通要件や必要書類を先に押さえておくと、勧誘を受けたときも落ち着いて判断できます。基本の整理は助成金は制度選びが先ではない|雇用助成金に共通する要件と必要書類が参考になります。
具体的な制度の例としては、パートの正社員化で助成金はいくら?|計画書は転換前日までにのように、計画書の提出時期など「順番」が決まっているものがあります。順番を間違えると対象外になるため、事前準備が欠かせません。
申請前に社内でそろえておきたい基本書類
勧誘の真偽に関わらず、助成金の申請では「実態を示す書類」がすべての土台になります。雇用関係の助成金では、一般に次のような書類の整合性が確認されます。
- 労働条件通知書・雇用契約書:職務内容、賃金、勤務時間が実際の働き方と一致しているか
- 賃金台帳・出勤簿(タイムカード):支払った賃金と勤務日数が、申請内容と矛盾しないか
- 就業規則・賃金規程:制度として定めた内容が、現場で運用されているか
- 雇用保険・社会保険の加入状況:対象者の加入手続きが適切に行われているか
これらが日頃から整っている会社は、助成金の対象になるかどうかの判断も早く、勧誘に慌てて対応する必要もありません。逆に、書類が整っていない状態で「とにかく通します」と言う提案は、実態と異なる書類づくりにつながりやすいため、慎重に受け止めてください。
制度ごとの必要書類や提出時期は、改定のたびに変わります。申請を検討する段階で、最新の公式資料を確認する習慣をつけておくと安心です。
まとめ
- 厚労省は「無料診断」などの助成金勧誘に関与しておらず、特定事業者へ勧誘を委託していない
- 不正受給は、返還・事業主名の原則公表・5年間の受給停止につながる
- 代理人や専門家が書類を作成しても、不正があれば事業主の責任になる
- 勧誘を受けたら、相手の立場・根拠・書類の中身を確認し、その場で契約しない
- 迷ったら労働局・ハローワークに相談し、採用の「前」に制度を確認する
FAQ
Q1. 「無料診断」を案内する事業者は、すべて危険ですか?
いいえ。無料の相談自体が問題というわけではありません。ただし、厚労省が注意喚起しているのは、国の委託を装った勧誘です。事業者の実在・資格・説明の根拠を確認し、書類の内容を自社で理解できるかを基準に判断してください。
Q2. 社労士に依頼すれば、不正受給のリスクはなくなりますか?
なくなるとは言えません。大阪労働局の資料では、社会保険労務士などの代理人による不正行為も事業主の不正受給に該当すると示されています。依頼する場合も、申請内容を事業主が確認することが大切です。
Q3. 勧誘を受けてしまい、不安です。どこに相談できますか?
都道府県労働局またはハローワークです。契約や書類提出をする前に、制度の内容と自社が対象になり得るかを確認してください。
Q4. 助成金の金額や要件はいつでも同じですか?
いいえ。制度改定により、金額・要件・申請期限は変わります。最新の情報は、必ず厚生労働省や労働局の公式情報で確認してください。
助成金の活用は「助成金カウンセリング」へご相談ください
有限会社リールゲイトは、大阪市西区北堀江で2003年から事業を行い、返済義務のない雇用助成金(厚生労働省の助成金)の活用を支援する初回無料の助成金カウンセリングを行っています。約20年の実績があり、狙い目となるスタッフの採用時・新規開業時のタイミングに合わせて、制度を整理します。
- 「国が何のために用意した制度か」を理解し、条件に合わせた雇用環境の整備を先回りして進める
- 流れは、お問い合わせ→簡単ヒアリング(電話15分)→カウンセリング(訪問またはZoom・60分)→その場で結果をご回答
- 金額・要件・締切は制度改定で変わるため、一般論と最新の公式情報をもとにご案内します
「届いた案内が本物か不安」「採用の前に何を準備すべきか知りたい」という段階でも構いません。まずはご相談だけでもお気軽にどうぞ。
参考文献・出典
- 厚生労働省|雇用関係助成金(勧誘への注意喚起)(2026年10月7日参照)
- 厚生労働省|助成金勧誘に関する注意喚起(PDF)(2026年10月7日参照)
- 大阪労働局|雇用関係助成金の不正受給に関する注意喚起(PDF)(2026年10月7日参照)
- 厚生労働省|雇用関係助成金共通要領Q&A(2026年10月7日参照)
- Googleトレンド(日本・過去1か月「助成金」の関連ワード)(2026年10月7日参照)


