高齢の方や障害のある方、母子家庭のお母さんを採用したい。でも「助成金が出ると聞いたけれど、いくらで、何をすれば対象になるのか分からない」という中小企業の経営者の方は少なくありません。

この助成金には、実は「採用前の動き方」で対象外になってしまう落とし穴があります。人を雇った後に気づいても、取り返しがつきません。

本記事では、厚生労働省の公開情報(2026年10月17日参照)をもとに、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象者・支給額・要件・申請期限を整理します。

この記事でわかること

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象者と支給額
  • 対象外になりやすい「紹介前の選考」という落とし穴
  • 支給申請の期限と、必要な書類・提出先
  • トライアル雇用助成金との使い分けの考え方
  • 採用前に確認すべきチェックリスト

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは

高年齢者、障害者、母子家庭の母など、就職が特に困難な方を、ハローワークや適正な運用を行う民間の職業紹介事業者等の紹介で雇い入れ、継続して雇用する事業主に支給される、返済不要の雇用助成金です。詳しい制度概要は厚生労働省|特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)で公表されています。

ポイントは「採用した人数に応じて」「その人が働いた期間に応じて」支給される点です。1回きりの補助金とは違い、雇用を続けるほど支給対象期が進みます。助成金と補助金の違いに迷う場合は、助成金と補助金の違い|経営者が最初に知るべき3つの分かれ道【2026】も併せてご覧ください。

対象になる方と支給額

対象者は、高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等、身体・知的障害者、精神障害者、重度障害者等などです。厚生労働省のページによると、高年齢者(60歳以上)については、令和8年5月1日以降、ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている方が対象とされ、原則として「対象労働者であること」を明示した職業紹介が必要です。

支給額(短時間労働者以外・1人あたり)

対象者

中小企業

中小企業以外

支給対象期間(中小企業)

高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等

60万円

50万円

1年

重度障害者等を除く身体・知的障害者

120万円

50万円

2年

重度障害者等

240万円

100万円

3年

週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、金額が下がります(例:高年齢者・母子家庭の母等は中小企業で40万円)。また、各期の支給額は、その期に支払った賃金額が上限です。見出しの「最大240万円」は、中小企業が重度障害者等を雇い入れた場合の最大額で、すべての採用で出る金額ではありません。

障害者雇用そのものの制度動向は、障害者雇用率2.7%へ|37.5人以上が対象、中小企業の助成金と申請先で整理しています。

主な要件|ここを外すと対象外になる

  • 紹介による雇入れ:ハローワーク、または適正な運用を行う民間の職業紹介事業者等の紹介で雇い入れること。
  • 継続雇用:雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ継続雇用期間が2年以上となることが確実であること。
  • 有期雇用は自動更新:有期雇用契約の場合は「自動更新」であることが必要です(令和5年10月1日以降)。
  • 賃金台帳の提出:令和8年4月以降の申請分は賃金台帳の提出が必要で、提出がない場合は不支給となります。
  • 共通要件:雇用関係助成金に共通する要件も満たす必要があります。

共通要件(労働保険料の納付、法令違反がないこと等)の考え方は、助成金は制度選びが先ではない|雇用助成金に共通する要件と必要書類で解説しています。

最大の落とし穴|「紹介前に選考を始めていた」は対象外

厚生労働省の「申請にあたって」では、ハローワーク等の紹介による雇入れであっても、紹介以前に選考を始めていた方を雇い入れると対象外になると明記されています。

よくある失敗は次のような流れです。

  1. 知人やスカウトで「この人を採りたい」と決め、面接や条件提示を済ませる。
  2. 後から助成金を知り、ハローワークの求人に出して形だけ紹介を受ける。
  3. 申請時に、紹介前から選考が始まっていたと判断され、不支給になる。

助成金を使う可能性があるなら、選考を始める前にハローワークへ求人を出し、紹介を受けてから面接に進む順序を守ってください。なお、助成金を使うと言って費用を請求する勧誘などには注意が必要です。助成金の「無料診断」勧誘に注意|不正受給は5年間受給不可【中小企業向け】も参考になります。

申請の期限・提出先・必要書類

厚生労働省の資料によると、支給は6か月ごとの「支給対象期」に分けて行われ、各支給対象期の経過後2か月以内に申請します。第1期は、雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日から6か月間が対象期です。支給申請期限を過ぎると、申請しても支給されません。

  • 提出先:事業所の所在地を管轄する労働局長あて(大阪府の事業所であれば大阪労働局)。管轄労働局が指揮監督するハローワーク経由で提出できる場合があります。
  • 書類:支給申請書(第1期は「対象労働者雇用状況等申立書」「支払方法・受取人住所届」も)、雇用契約書または雇入れ通知書、役員等一覧など。
  • 保管:労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などを、求められたときに提示できるよう整備・保管する。

賃金締切日が求人票と異なると申請期間が変わるため、早めにハローワークや労働局へ確認しましょう。

トライアル雇用助成金との使い分け

「いきなり長期で雇うのは不安」という場合は、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)という選択肢もあります。厚生労働省の資料では、原則3か月の試行雇用で、助成額は月額最大4万円(最長3か月、母子家庭の母等は最大5万円)とされています。トライアル雇用は、雇入れ前にトライアル雇用求人をハローワーク等へ提出し、開始から2週間以内に実施計画書を提出する流れです。

特定求職者雇用開発助成金は「継続雇用が前提」、トライアル雇用は「適性を見極める期間」と考えると整理しやすくなります。両者の最新の要件は、必ず厚生労働省・ハローワークでご確認ください。

採用前チェックリスト

  • 採用したい方は、制度の対象者(年齢・障害の区分・支援状況)に当てはまるか
  • ハローワーク等への求人提出と紹介の前に、選考や内定を出していないか
  • 雇用保険の適用事業所で、継続雇用の見込み(65歳以上に達するまで・2年以上)が持てるか
  • 有期契約の場合、契約が「自動更新」になっているか
  • 賃金台帳・出勤簿・労働者名簿が日々整備されているか
  • 各支給対象期の申請期限(経過後2か月以内)を管理できるか

関西の中小企業で気をつけたいこと

大阪をはじめ関西の中小企業では、人手不足から「高齢の経験者を採りたい」「ブランクのある方を戦力にしたい」という相談が増えています。採用が決まってから制度を調べるのではなく、求人票を出す前に助成金の対象になるかを確認することが、取りこぼしを防ぐ最大のコツです。

まとめ

  • 特定求職者雇用開発助成金は、紹介による雇入れと継続雇用が前提の、返済不要の雇用助成金です。
  • 支給額は対象者・企業規模・労働時間で変わり、中小企業の重度障害者等で最大240万円です。
  • 「紹介前に選考を始めた」場合は対象外になるため、順序を守ることが最重要です。
  • 申請は各支給対象期の経過後2か月以内。期限切れは支給されません。

FAQ

Q. パートやアルバイトの採用でも対象になりますか?

A. 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者にも、金額が下がる区分が用意されています。ただし、雇用保険の被保険者となることなどの要件を満たす必要があります。

Q. すでに面接を済ませた方を採用する場合は使えませんか?

A. 厚生労働省の資料では、ハローワーク等の紹介以前に選考を始めていた方を雇い入れると対象外とされています。個別の事情は、管轄の労働局・ハローワークにご確認ください。

Q. 助成金は一括で受け取れますか?

A. 支給は6か月ごとの支給対象期に分けて行われ、期ごとに申請します。各期の支給額は、その期に支払った賃金額が上限です。

Q. 制度の内容は変わりますか?

A. 助成金は改定が頻繁です。この記事は2026年10月17日時点で確認した内容で、申請前には必ず最新の公式情報をご確認ください。

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返済義務のない雇用助成金は、スタッフの採用時や新規開業時が活用の狙い目です。助成金は「国が何のために用意した制度か」を理解し、条件に合わせた雇用環境の整備を先回りして進めることが大切です。リールゲイトの助成金カウンセリングは、約20年の実績をもとに、雇用助成金の活用を支援する初回無料のカウンセリングです。

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参考文献・出典