「男性社員が育休を取りたいと言い出した」「親の介護で休みが増えそうな社員がいる」。中小企業の経営者なら、一度は直面する場面です。そんなとき、国が用意している返済不要の雇用助成金が両立支援等助成金です。

ただし、この助成金は「休みを取らせたあとに申請すればよい」制度ではありません。多くのコースで、休業を始める前に整えておくこと(規定・プラン・面談・業務の引き継ぎなど)が要件に入っています。

この記事では、厚生労働省の2026(令和8)年度の資料にもとづき、6コースの全体像と金額の目安、申請前に決めておくことを整理します。

この記事でわかること

  • 両立支援等助成金の6コースの違いと、金額の目安
  • 申請前に社内で決めておくべきこと
  • 申請先と、よくある見落とし

両立支援等助成金とは?

両立支援等助成金は、仕事と育児・介護などを両立しやすい職場づくりに取り組む事業主に、厚生労働省が案内している助成金(2026年度のご案内)です。融資とは違い、要件を満たせば返済は不要です。

支給の窓口は、本社等の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。大阪府に本社がある会社なら、大阪労働局が窓口になります。

6コースの全体像と金額の目安

2026年度の手引きでは、次の6コースが並んでいます。金額は厚生労働省の資料に記載された区分ごとの額で、要件を満たした場合の目安です。

1. 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

男性労働者が育児休業を取得した場合などに支給されます。育休取得は、1人目が20万円(雇用環境整備措置を4つ以上実施した場合は30万円)、2・3人目は各10万円です。育休取得率が大きく上がった場合には60万円の区分もあります(対象は特定事業主)。

育休は子の出生後8週間以内に開始し、連続5日以上取得することが要件の一つです。申請期限は、育休終了日の翌日から2か月以内とされています。

2. 介護離職防止支援コース

対象は中小企業事業主です。介護休業の取得・復帰で40万円(連続15日以上の休業は60万円)、介護両立支援制度の利用で20万円または25万円、代替要員の新規雇用で20万円、介護休暇の有給化で30万円(10日以上の有給なら50万円)といった区分があります。

3. 育児休業等支援コース

育休の取得時に30万円、職場復帰時に30万円です。育休復帰支援プランの作成、面談、3か月以上の育休、復帰後6か月以上の継続雇用などが求められます。

4. 育休中等業務代替支援コース

育休を取る人の業務を支える側への支援です。代替要員を新規雇用・派遣で受け入れる場合や、業務を引き受けた社員に手当を支給する場合が対象になります。金額は区分や期間で異なるため、手引きの該当ページで確認してください。

5. 柔軟な働き方選択制度等支援コース

育児のための柔軟な働き方制度(フレックスタイム、時差出勤、テレワーク、短時間勤務など)を3つ以上導入して利用させると20万円、4つ以上で25万円です。子の看護等休暇の有給化には30万円(1事業主1回限り)があります。

6. 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療、月経に起因する症状、更年期に起因する症状への支援制度を5日(回)利用させた場合に、それぞれ30万円(各1事業主1回限り)です。両立支援担当者の選任などが求められます。

※金額・要件は年度ごとに改定されます。最新の内容は両立支援等助成金支給申請の手引き(2026年度版)で確認してください。

申請前に社内で決めておくこと

どのコースでも共通して重要なのが、「制度を使う社員が出てから慌てない」ことです。助成金は、次のような準備が整っていてはじめて対象になります。

  1. 就業規則(または労働協約)に制度を書く:育児休業、介護休業、柔軟な働き方制度などを規定します。口頭の運用では対象になりません。
  2. 面談とプランを記録に残す:育休復帰支援プランや、仕事と介護の両立支援プランなどを、面談して作成します。
  3. 業務の引き継ぎ体制を決める:誰がどの業務を引き受けるか、休業前に整理します。
  4. 雇用保険の被保険者であることを確認する:継続雇用の要件に関わります。
  5. 申請期限をカレンダーに入れる:出生時両立支援コースは育休終了日の翌日から2か月以内です。他のコースは手引きで確認します。

雇用助成金に共通する要件や必要書類は、助成金は制度選びが先ではない|雇用助成金に共通する要件と必要書類でも整理しています。

2025年10月の育児・介護休業法改正との関係

育児・介護休業法の改正により、2025年10月から、柔軟な働き方を実現するための措置や、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主の義務になりました(労働局の案内ページ)。

法律で求められる整備と、助成金の要件が重なる部分は少なくありません。「義務だから対応する」だけで終わらせず、同じ準備で助成金の対象にできないかを確認する価値があります。

関西の中小企業が気をつけたい点

大阪を含む関西の中小企業では、少人数で業務を回していて、一人が休むと現場が止まるという声をよく聞きます。だからこそ、代替要員の確保や手当の支給を支援する育休中等業務代替支援コースは、検討の価値があります。

手続きは本社所在地を管轄する労働局で行います。大阪府の場合の案内は大阪労働局の「各種助成金について」で確認できます。

採用や定着とあわせて助成金を考えたい場合は、雇用保険料は助成金の原資|中小企業が払うだけで終わる理由や、パートの社会保険加入に使える助成金の記事も参考になります。

どのコースから検討するか|会社の状況別の考え方

6コースすべてを一度に検討する必要はありません。いま社内で起きていること、これから起きそうなことから逆算すると、優先順位が見えてきます。

  • 男性社員に子どもが生まれる予定がある:出生時両立支援コースが入口です。育休を子の出生後8週間以内に始める必要があるため、時期が決まる前に就業規則と業務体制を整えておきます。
  • 育休からの復帰を見据えている:育児休業等支援コースは、育休取得時と復帰時の両方で支給区分があります。復帰支援プランを面談のうえで作る流れを、あらかじめ社内ルールにしておくと運用が楽になります。
  • 親の介護が気になる年代の社員が多い:介護離職防止支援コースです。介護は突然始まることが多く、仕事と介護の両立支援プランを様式として用意しておくと、いざというときに慌てません。
  • 制度を整えて、働き方そのものを見直したい:柔軟な働き方選択制度等支援コースです。導入した制度を実際に利用させることが条件になるため、導入しただけで終わらせない運用が必要です。

よくある見落としと、避けるための工夫

申請で差がつくのは、制度の知識よりも「証拠が残っているか」です。面談の日付、プランの内容、休業の開始日・終了日、賃金の支払い状況といった記録は、後から作り直せません。休業が決まった時点で、必要な書類と記録の担当者を決めておきましょう。

また、同じ社員でも、コースごとに要件の数え方(連続日数や継続雇用の期間など)が異なります。手引きの該当コースを1ページずつ確認し、社内のチェックリストに落とし込むと、抜け漏れを防げます。

なお、助成金は「もらうため」に制度を作るものではありません。社員が安心して休み、戻ってこられる職場をつくることが本来の目的です。その結果として助成金が活用できる、という順番で考えると、制度が形だけにならず、採用や定着にも良い影響が期待できます。

まとめ

両立支援等助成金は、育児・介護・不妊治療などと仕事の両立に取り組む会社を支える制度で、2026年度は6コースがあります。ポイントは「社員が休む前に、規定・プラン・引き継ぎを整えておく」ことです。まずは自社に近いコースを1つ選び、手引きで要件を確認しましょう。

FAQ(よくある質問)

Q. 両立支援等助成金は、社員が休んでから申請すればよいですか?

A. コースによっては、休業の前に規定の整備やプラン作成、面談が必要です。休んだあとでは要件を満たせない場合があるため、事前準備が大切です。

Q. 申請はどこにすればよいですか?

A. 本社等の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。大阪府なら大阪労働局です。

Q. 金額は必ず受け取れますか?

A. いいえ。記載の金額は要件を満たした場合の目安で、審査があります。制度は毎年改定されるため、最新の手引きで確認してください。

Q. 複数のコースを同時に使えますか?

A. コースや対象者によって異なります。併用の可否は、手引きの記載か労働局で確認してください。

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参考文献・出典